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翔 ぶ 魚

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ひとの夢の中

夜はたいがい起きている。

性分なのか体質なのかとにかく寝付きが悪い。
もの心がついた頃からなので、だいぶ慣れた。
慣れはしたがいつしかおかしな習慣もついた。

眠れないでいる間、他人の夢を空想するのだ。
人の夢の中で遊ぶと言ってもいい。

覗き見的で悪趣味?
でもまあ実際に覗けるわけではないのでね。
長い長い夜を独りで過ごすのはなかなか退屈なのだ。

子どもの頃は3人姉妹川の字にフトンを並べて寝ていた。
両隣の姉たちが寝息をたてる中一人で退屈してしまうと、
勝手に姉の手をフトンから引っ張りだしてつないだり、
無駄と知りつつ話しかけてみたりしたものだ。

しかしどれもむなしい。
隣で眠る人は近いようではるか遠い異世界にいるのだ。
結局、置いてけぼりをくらったワタシは
いま姉たちはどんな夢を見ているのだろうかと
あれこれ想像し疑似共有することで
長い夜をなんとかやり過ごした。

大人となったワタシも依然として寝付きは悪いまま。
人といる夜も一人の夜も
相も変わらず、たいがい起きている。
そうして朝までのあいだ想いを馳せてきた。
家族の、友人の、恋人の、飼い犬の、
すきな人の、けんかした人の、
会えない人の、まだ見ぬ人の、誰かの、夢の中へ。

空に漂うただの視点として見る。
瞬間移動もタイムトラベルも自由自在。
時には自ら登場人物として夢の主に接触してみる。
多くの場合はモブの一人としてすれ違うにとどめる。

子どもの頃は朝になると姉に答え合わせをもとめたものだが、
さすがに今は誰とも答えを合わせはしない。
だってただの空想だからね。

今宵みなさんが見る夢がいい夢でありますように。




by omifish | 2012-01-23 23:23 | 向こうの町
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