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翔 ぶ 魚

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十月二十六日 深夜の甘味

ちかごろ深夜に思い立って作るもの
珈琲ゼリー。


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少し濃いめに珈琲を入れて甘みを足し
それをゼラチンで固めるだけだ。
なんて簡単なんだ。
ちなみにクリームはちゃんと純乳脂のを
少し泡立ててかける。

問題は、冷やして固めるので
食べたいと思い立ってから
口に入れるまで2時間かかること。
そして食べたいと思い立つのが
たいてい深夜の2時過ぎだということだ。

それにしても、深夜のお菓子作りは
どうしてこうもわくわくするのだろう。
密やかで、静かで、甘い匂い。
ちょっと不穏な感じがするのも楽しい。



by omifish | 2009-10-26 18:27 | うちごはん

十月十八日 フィッシャー・キング

地下鉄に向かう階段の降り口で
路上生活者らしきおっさんが座り込んでいる。
そんなのは、その辺りでは珍しくもない光景なので
人々はせわしなく行き過ぎる。
おっさんは何か大声で演説している。
それだって、とくに珍しいことではない。
しかし、その枯れていない朗々とした腹からの声は
ぼんやりと歩いていたワタシの耳にダイレクトに届いた。

「あまぁい、あまぁい人生だけが…」
「ぐいっと引っ張ったら…がひっくりかえって…」

朗々とした声の割には強弱がありすぎて
肝心なところが聴き取れない。

…何を引っ張ったら、何がひっくり返ったの?

とくにせわしくもないワタシは
一旦通り過ぎて立ち止まり、ゆっくりとひきかえした。
がしかし、
それきりおっさんは黙り込んでしまった。

甘い甘い人生だけがなんなのか。
思いっきりぐいっと引っ張ってみたらどうなるのか。
もしかしたら、大事なことを聞き逃したんじゃないのか。
もしかしたら、真実のようなものを語ってたんじゃないのか。
予言者や使者というのはいつの世でも
人の目を試すがごとく弱者の姿で現れるんじゃなかったか?

そんなロマンチシズムは、
もちろん錯覚だ。
真実への探究心は臭気を前に撤退する。
ワタシも然りだ。

by omifish | 2009-10-19 03:33 | white>black

十月九日 おもはっはい?

小料理屋ののれんをちょいとあげて
引き戸を開けて中に入ると
女将が毎度といったかんじの笑顔で迎えてくれる。
が、つぎにその口から出た一言には馴染みがなかった。

「おもはっはい?」

…疑問系であるらしいのは分かったが、
何のことやらさっぱりなので
きょとんとしつつ無言でいた。
聞き取れなかったので言い直してもらおうと思ったのだ。

「おもはっはい?」

がしかし、女将は同じ言葉をはっきりとくりかえした。
やさしく微笑みながら我々の顔を眺めている。
…?
ワタシは隣りの恋人の顔を伺ってみた。
彼も困惑したようにこちらの顔をみつめかえしてくる。
この人何言ってるの?
さあ。
てなもんである。
それでも、女将の方では何もおかしなことを
言ってるつもりはないらしく、じれた様子もなく
何度でもおっとりとくりかえす。

「おもはっはい?」

それはまるで
「おもては寒かった?」とか
「まずはビールでいいの?」と言うような
さりげない気安さだ。

「えー…、はい。」

その気安さに乗るように、とりあえずうなずいてみた。
すると女将は目尻にさらに深いシワを刻みながら
満面の笑顔でこう言った。

「じゃ、お守りを送っときますね。」


…は
お、お守り…
なして、お守り?そしてそれを送る?え、何処に?

おもはっはると
もれなくお守りが自宅に送られくるものなのか?
守ってもらう必要があるような行為だということか?
…なんか、それって穏やかじゃない感じですけど。
てか、そもそも
おもはっはいって…一体全体、何ですか?


あなたは?
あなたも?

おもはっはい?



by omifish | 2009-10-09 16:38 | 向こうの町