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翔 ぶ 魚

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十月十八日 フィッシャー・キング

地下鉄に向かう階段の降り口で
路上生活者らしきおっさんが座り込んでいる。
そんなのは、その辺りでは珍しくもない光景なので
人々はせわしなく行き過ぎる。
おっさんは何か大声で演説している。
それだって、とくに珍しいことではない。
しかし、その枯れていない朗々とした腹からの声は
ぼんやりと歩いていたワタシの耳にダイレクトに届いた。

「あまぁい、あまぁい人生だけが…」
「ぐいっと引っ張ったら…がひっくりかえって…」

朗々とした声の割には強弱がありすぎて
肝心なところが聴き取れない。

…何を引っ張ったら、何がひっくり返ったの?

とくにせわしくもないワタシは
一旦通り過ぎて立ち止まり、ゆっくりとひきかえした。
がしかし、
それきりおっさんは黙り込んでしまった。

甘い甘い人生だけがなんなのか。
思いっきりぐいっと引っ張ってみたらどうなるのか。
もしかしたら、大事なことを聞き逃したんじゃないのか。
もしかしたら、真実のようなものを語ってたんじゃないのか。
予言者や使者というのはいつの世でも
人の目を試すがごとく弱者の姿で現れるんじゃなかったか?

そんなロマンチシズムは、
もちろん錯覚だ。
真実への探究心は臭気を前に撤退する。
ワタシも然りだ。

by omifish | 2009-10-19 03:33 | white>black
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